リハビリテーション
肩
肩関節周辺疾患(腱板損傷、いわゆる五十肩、脱臼、骨折など)に対して徒手・運動療法を行います。主な治療内容としては肩関節の可動域訓練と同時に脊柱や胸郭、肩甲骨やその周囲筋に対して緊張を緩和し、動きの改善も行います。筋力低下を認める場合は筋力強化も実施します。また、腕、肩の動きは姿勢の影響を強く受けますので、姿勢の悪い方には姿勢改善のための運動や指導を行います。通院治療も大事ですが日常的に運動することが肝要ですので自主訓練の方法も指導し、自宅で運動を行ってもらうようにします。また、日常生活や仕事における負担のかかり過ぎない肩の使い方や注意点も、具体的な例を挙げながら指導します。
当院で多く診断される代表的な疾患として五十肩(凍結肩)があります。特にはっきりとした原因がなく、何となく腕が挙げにくい、ズボンの後ろポケットに手をもって行く動きや、上着を脱ぎ着する時などに軽い痛みを伴った動かしにくさを感じるといった初期症状から始まり、徐々に激しい痛みと運動障害、夜間の痛みで目が覚めるなど、症状が悪化していきます。この時期(発症後3カ月くらい)になって初めて受診される方が多いです。
リハビリテーションの流れとしては、特に痛みが強い場合、可動域訓練は軽く行い、肩関節以外の緊張を和らげることを優先します。通院リハビリは週1~2回を目安とし、自宅でも指導内容に沿った運動を行います。その後痛みが軽くなってくれば可動域訓練に移行し、また通院も2週間に1回程度に間隔を空けていきます。日常生活での支障が解消されてくれば、自宅での運動は継続してもらいますが、通院リハビリ自体は終了となります。症状の改善が芳しくない場合は組織間の癒着をとる目的で超音波下に注射で癒着部に液を注入(ハイドロ・リリース)する方法を行います。
腱板が断裂している場合、必ずしもすべての症例で手術が必要になるとは限りません、リハビリテーションにより疼痛や運動制限が改善し日常生活に支障がなくなる場合も多くあります。まずはリハビリテーションを2、3力月実施したうえで奏功を認めなければ手術という選択肢もあり得ます。
そのうち改善すると判断して数週間、数力月間におよび放置してしまうことがあり、来院時には既に肩が硬くなってしまっている患者様が多くみられます。結果的に数力月から場合によっては半年、1年以上の長期間の通院が必要となり、患者様の負担が大きくなってしまいます。痛みや異常を感じた場合は自己判断をせず、早めに診察を受けるようにしましょう。
腰
腰痛は若年者から高齢者と幅広い年齢層で身近な疾患の一つです。
症状の訴えは、前かがみ・反り・捻りでの痛み、長時間の座位・立位・歩行ができない、おしりのだるさ・下肢の痺れ・交通事故のなどがあります。これらの症状からは、急性腰痛症、腰椎間関節症、腰椎椎間板ヘルニア、仙腸関節障害、変形性脊椎症、圧迫骨折、腰椎捻挫が考えられます。その中でも患者様に多いのは、急性腰痛症です。重たい荷物を持ち上げようとした時に激痛が出現・急な動作での痛みから、身体を動かすことに制限がおこります。
腰痛の発生要因はさまざまですが、腰部の筋肉・関節・神経などのさまざまな部位から痛みの発生源になっています。また、不良姿勢(座位・立位・歩行)、柔軟性低下、関節の可動域制限、筋肉のアンバランス、運動不足、急な過度の運動、肥満などもあげられます。
発生要因に対して、当院でのリハビリテーションは、物理療法(温熱療法など)・理学療法士と一緒に行うリハビリテーションを中心に行っています。以下、具体的なリハビリテーションの流れです。
物理療法
主に温熱療法などで循環の改善や痛み軽減を行います。
理学療法士と行うリハビリテーションの内容
期間
始めは週に1回程度のリハビリテーションを行い、症状軽減してきたら2~3週間に1回
具体的な流れ
- 1.腰痛の原因を探るために理学療法士が検査を行う。
立位・座位の姿勢、各関節の可動域、柔軟性、筋力などの検査をします。 - 2.その原因に対して以下のリハビリテーションを行う。
- ◆リラクゼーション
急性に腰痛が生じ、動作一つを行うこともしんどい腰痛の方は、腰の痛みから全身に力が入り、筋肉が緊張状態になっている方が多くみられます。まずは、身体をあまり動かすことなく、筋肉の緊張を緩和します。 - ◆ストレッチ
腰痛の方で多いのは、柔軟性の低下です。筋肉の固さは、各関節の動きを悪くし、姿勢や動作に悪影響を与えます。一人一人に合わせてストレッチを行います。 - ◆筋力強化運動
筋肉のアンバランスからも腰痛が発症します。運動不足から筋力が低下し、不良姿勢・動作時の疼痛が出現することもありますので、体幹・下肢・足趾などの筋力強化を行います。 - ◆姿勢指導
不良姿勢は腰痛の大きな原因です。立ち仕事・デスクワーク・家事などで腰痛を抱えている方、正常の姿勢と患者様の姿勢の違いを指導します。自分自身の姿勢のどの部分が悪影響を与えているのかを理解することも改善への一歩です。 - ◆ホームプログラム(ご自宅でのリハビリテーション)
患者様自身に必要な運動を理学療法士が考え、ご自宅でもできるリハビリテーションを指導します。病院だけのリハビリテーションだけでは、改善を遅くします。毎日することで、改善・腰痛再発への予防にも繋がります。また、近年の日本は社会環境の変化・食生活の変化・運動不足から肥満の人が急激に増えているといわれています。腰痛の改善・予防のためにも、日常生活で体重管理も心掛けましょう。
- ◆リラクゼーション
以上のようなリハビリテーションを患者様一人一人に合わせて行います。
痛みを伴って生活するのは、とてもつらいものです。身体の一部の痛みにより、他の部位への痛みの出現も考えられます。早めに受診するようにしましょう。
膝
日常生活動作において膝関節は、正座、階段の上り下り、自転車の走行などの際に重要な役割を果たしています。スポーツにおいても野球やテニス、バスケットボール、バレーボールなどのダッシュやジャンプ動作時の着地際に衝撃を軽減させる役割も担っています。このように日常生活動作やスポーツ競技において膝関節は大きな役割を果たしているのですが、痛みを伴う膝関節の疾患を発症するとこれらの動作が困難になり日常生活に支障をきたします。
痛みを伴う膝関節の疾患として考えられるものは、中高年以降は変形性膝関節症、側副靭帯損傷、怪我、スポーツ障害では半月板損傷、前十字靭帯損傷などがあります。認められる症状としては、
- ・しゃがめない、正座ができない
- ・歩行時に痛む
- ・階段昇降時に痛む(特に下りが強く痛む)
- ・曲げ伸ばしをした時に痛む
- ・膝が腫れている、膝が熱っぽい
- ・ランニング時に痛む
- ・スポーツでのダッシュ、ジャンプ、切り返し動作時に膝が痛む
などがあります。
いずれの膝関節の疾患も診察、レントゲン、MRIでの所見などをもとに診断がつけられます。
中高年に多い変形性関節症の原因は、加齢に伴った膝関節軟骨の磨耗、膝関節周囲筋の筋力低下、下半身全体の柔軟性低下、不良姿勢、肥満などが挙げられます。リハビリテーションでは、理学療法士が個人の症状に合わせて筋力強化運動、ストレッチなどの治療を行い、痛み、運動制限の改善を目指していきます。その他、症状の改善を目的とした自宅で行っていただくホームエクササイズの指導や日常で困っている動作の方法、痛みに対しての対処法など、疾患と上手に付き合っていく方法も指導させていただきます。
具体的に、変形性膝関節症に対してのリハビリテーションの内容は、筋力強化運動、関節可動域運動、姿勢指導、日常生活指導を行っていきます。筋力強化運動は主に膝関節、股関節周囲の筋力、体幹の筋力を高める運動などを行います。関節可動域運動は膝関節、股関節などの柔軟性を高める運動を行っていきます。膝関節が変形する要因として、姿勢の崩れや筋力・柔軟性のバランスが崩れることか挙げられるため、姿勢指導と並行して各関節の筋力・柔軟性のバランスを修正するような運動を週一回のペースで行っていきます。
スポーツ障害による半月板損傷、前十字靭帯損傷に対してのリハビリテーションの内容は、筋力強化運動、関節可動域運動、スポーツ動作指導などを行います。スポーツ障害では、膝・股関節の筋力・柔軟性のバランスの崩れが受傷につながるため、競技動作に合わせた各関節の筋力・柔軟性の機能を向上させる運動や実際の競技動作に障害の原因がある場合が多くあるため、動作指導も並行して行いスポーツに復帰してゆきます。
また、当院では人工膝関節置換術後、半月板損傷術後など膝関節疾患の術後のリハビリテーションも行っています。術後で膝に痛みが出てきた、力が入りづらいなど日常生活動作やスポーツ動作に支障が出てきた場合もリハビリテーションの治療対象になります。